東京都在住の40代主婦(E)様から東京都内で建築した狭小住宅のマイホーム購入体験談です。
自由業の夫を支えるはずの自営業が、赤字続きで「廃業を検討中」、「家の建て替え」問題、「子供の大学受験」という3重苦?の最中におきた、住宅ローンを借りずに予算1500万円で注文住宅を建てたいという主婦の挑戦をご紹介します。
家業は倒産寸前、我が家は倒壊寸前!?
それまで住んでいた家は、主人が若い時に買った(正確には主人の母)築40年以上の中古住宅で、土地23坪のいわゆる狭小住宅になります。
物干しのベランダは付け根が錆つきボロボロで、数年前からその上を歩くのを避けていたほどです。
建て替えたいという気持ちはあっても「漫画家は住宅ローンが組めない」と聞いていて先延ばしにしていました。
記録的な大雪が首都圏を襲ったその冬の出来事のことです。
深夜に聞こえた大きな物音が、我が家の木が倒れた音だったと知ったのは、翌朝のことでした。
家族3人、道の真ん中に倒れた木を見て呆然自失。
それを見て、倒壊する前に家を建て替えるとわたしは決心したのです。
すぐに子供の大学費用と若干の老後費用などを除き、家にかけられる予算を試算しました。
そして出てきた数字は1500万円(希望&目標)。1週間後には、家から近い住宅展示場へ、主人とともに見学へ行っていたのです。
掃除のしやすさと収納スペースを確保したい!
家を建てる際の希望は人によって異なるもの。居住スペースの倍以上を荷物に占拠された家に住んでいた私たちの絶対条件は、以下の4点。
- 掃除が苦手・嫌いな人でも清掃しやすいこと
- 本・CDなどの収納スペースを確保すること
- 楽器やオーディオセットがおける楽器室をつくること
- 予算は1500万円に近い数字で。ローンは組まずに現金払いできる範囲で建てる。
予算とは別に予備費を用意しよう。親の援助には感謝と注意が必要!
住宅展示場に行く前の予習で、当初の予算より最終的にオーバーすることが多いらしいと知ったので、予算とは別に予備費500万円の二段階で臨むことにしました。
支払方法に関して、郵便局は自由業でもローンを組みやすいと何人かの不動産業者さんから伺いましたが、やはり借金は嫌いなので現金払いを選びました。
自己資金以外で、わたしの母親が300万円を援助してくれ助かったのですが、それが後々災いになるのです。
設計の段階になって、いろいろ「口をはさんできた」のです。
父は亡くなり母一人なので、形見分けに着物の詰まった桐箪笥3棹をはじめ、大物家具をいくつも新居に持って行けと言い張る始末。
お金を返すと言えば大喧嘩になるのは目に見えています。
結局、貰うことにしました。
モデルハウスをハシゴ・足で歩き回った怒涛の3週間
家から近いハウス展示場2か所を夫婦で見学に行ったのが3月初め。
予想より1社にかかる時間は長く、1日で2~3社ぐらいしか話は聞けません。
計5社(木下工務店・一条工務店・タマホーム・アキュラホーム・三井ホーム)から資料を貰いましたが、帰宅した時はくたくたでした。
同時進行で、自宅や仕事場近くの住宅メーカーから資料を集め、気に入った業者には問い合わせや新築見学会に参加しました。
一方ネットでは、家のプランより各メーカーの口コミ、契約時に注意すること、建築過程でのトラブルなどをメインに情報収集。
夫婦で近隣を歩き回り、それぞれの気に入ったデザインやカラーなどの意見交換をしました。
3月は決算月のハウスメーカーが多く、予算の合いそうなところは、担当者さんが積極的に見積もりを提案してきてくれます。
結果として有名な工務店・地元の工務店・大手の住宅メーカーの3社から、具体的な建築プランを出していただきました。
最終的に「品質が気に入った有名な工務店に決定」。
価格が魅力的だった他の住宅メーカーの2社も迷いましたが、営業担当さんと話を重ねた上で、工務店にしたのです。
提案を比較する中で、自分の求めている形が見えてきた
担当営業マンの比較
土地はすでにあったので、どの担当さんも真剣に対応してくれました。
「何だかな~」と感じた業者は、12社のうち1か所のみ。
そこの予算は平均の倍くらいしていたので仕方がないですね。
地元工務店の担当さんは口下手でしたが、その分丁寧に説明してくれ、マイナスには思いませんでした。
提案の比較
1500万円の予算と土地の大きさから、できることは限られており、各社大きな差はありません。
あえて言えば、予算重視でプランを出してきた業者は、中身もシンプル。若干高めに出てきた業者は、その分アイデアも盛り込まれていました。
「ちょっと高くなるが、ここは○○しましょう」という営業の姿勢に好印象です。
部屋の間取りで気に入った1社があったのですが、別の2社に「御社でこんな風にできるか」と聞いてみたら「家の強度が弱くなるのでお勧めしない」と言われました。
我が家は「デザインよりも安全重視が重要」、提案を比較する中で自分たちの優先順位が見えてきたのは良かったです。
特徴はそんなにない!?注目は実際に施工する自社か下請けかを重要視
各社、技術的にもあり違いは感じない中、施工業者が下請けか自社かという点は注目しました。
ネットで、施工業者が下請けのため、発生したトラブルの記事を多く読んだからです。
自社施工がいいと、主人と同意しました。
自社施工が決め手になった最終決定
以上の理由で、自社施工の会社に決定。決算月ということで、両社から提示されたサービスの中で主人が気に入ったのが、1階の天井高さを、通常料金で高くしてもらえるという点でした。
これが、後で新たな問題点を生み出すことになってしまうのです。日照権の問題で説明します
こだわりと妥協の間で、いかに着地点を見つけるか
いよいよ本格的な設計の開始です。
収納スペースはロフトを広くすることで対応。
シンプルな内装・照明器具で掃除のし易さを、というところまでは順調にいきます。初めて知ったのが、狭小住宅では家具を入れる場所を予め決めて間取りをデザインすると、無駄なくスペースが利用できるということ。
そのため、どこに何の家具を入れるのか、事前に決定する必要があり、断捨離と合わせて悩んだポイントです。
ここで日照権による建築制限の問題が明らかになります。
2階の隣家側が高さ制限で150センチしかないと判明。
わたしは1階を普通にして2階の高さを確保したいと主張しましたが、主人が大反対。
結局、施工業者を決定した理由の一つが「1階の天井高さを通常価格で260センチにするサービス」で、建築条件を確認せずにそれを言い出した営業の不手際ということで、先方からの申し出により追加料金なしの傾斜天井にすることで解決としました。
さらに地盤改良の可能性が指摘されます。
実は、数年前に建て替えたご近所でも100万円以上かかったと聞いていたので、覚悟はしていました。
地盤改良工事は140万円近い出費となったので、外構工事を最低限(駐車場と家周りのブロック)で我慢。
ロフトに上がるのに、移動式階段ではなく普通の階段をつけるのにこだわった結果、子供部屋が大きく、4.5畳の部屋が4.3畳と狭くなることに。
4.3畳の部屋と楽器室を1つにしようと提案しても、主人が大反対。
わたしも実家から大きな箪笥を3本も子供部屋に入れることにしたので、主人に反対しきれず妥協。
ですがその窮屈さに、この妥協だけはしてはいけなかったと、今でも大きく後悔しています。
思わぬ出費に予備費が足りない?
- 当初予算(建物本体)1500万円→1780万円→最終支払い1900万円強
- 家の大きさ…建坪 約26坪、土地 約23坪
間取り…1F 16LDKバス・トイレ、2F 洋室各10畳、4.3畳、6畳、トイレ、
ロフト 6.8畳、1.5畳
- 諸費用…約66万円
(申請・検査手数料32.4万円、印紙料1.5万円、敷地調査料5.25万円、登記費用15万円、その他各種負担金約12万円)
- 付帯工事費用…約310万円
(地盤改良工事 約140万円、外構工事 約60万円、解体工事 約110万円)
- 引っ越し(往復 約33万円)、仮住まい費用(2LDK・6か月分 約83万円)
引っ越し業者が仮住まいの間(1年の上限つき)、無料で不要な荷物を預かってくれたのが魅力。
担当営業さんのご紹介でしたが、他社より2万円ほど安かったです。
ところで建て替えでは仮住まいの予算を失念しがちですが、結構かかります。
通勤重視で選んだのですが、安い物件にすれば良かったかも。
- 不動産取得税 0円
新築住宅は、延べ面積(50㎡~240㎡)であれば1200万円の軽減措置を受けられ、払わずにすみました。
- その他
上記以外に、照明器具・カーテンを始め、新調したい電化製品・家具もあると思います。
我が家はリビングに5.1サラウンドを導入しました。
いずれもピンキリありますが、これらの出費は楽しみの一つでもあります。
上記費用の結果として、この部分の出費がとても苦しくはありましたが、気に入った物を購入した価値はあったと思います。
建築開始から完成まで。想定外のご近所からの苦情に対処
家の建築に関しては、計画通りに問題なく進みましたが、解体時に事件が起こりました。
予防にかけたカバーの網目より細かい埃が出て、ご近所3軒の自家用車がほこりまみれになってしまったそうです。
すぐに現場の方が謝罪し洗車したとの報告を受けましたが、自分でも謝りに行きました。
2軒は「お互いさま」と言ってくださったのですが、お隣の奥さんからはかなり嫌味を言わることに。
20年ほど前にお隣が家を建てられたとき、我が家の車と洗濯物が被害を受けた際には文句も言わず我慢した過去があるだけに、釈然としない思いが残りました。
今は以前のようにご近所付き合いをしていますが、自分の中に壁ができたことは確かです。
実際に生活を始めて、良かった点・悪かった点
- 良かった点・満足している点
トイレを1階と2階につけたこと。2階にトイレをつけると居住スペースが狭くなるとアドバイスされましたが、必要と感じ取り付けた結果は大正解。なければ不便で仕方ありません。
ロフトに小階段をつけたこと。ロフトは2か所あり、主人専用のロフトは移動式階段なのですが、物置用のロフトは小階段のおかげで重い荷物の持ち運びが楽です。
- 悪かった点・問題点
4.3畳しかない部屋。本当はこちらに楽器を入れたいのに、主人がうんと言いません。
1階のリビングの窓を主人の希望でクリアガラスにしたので、カーテンを開くと家の中が丸見え。すりガラスでも同じくらい明るかったので、これは10年後ぐらいにすりガラスに取り換える予定です。
初めてマイホームを購入しようと考えている皆さんへ
初めて家を建てる時は、楽しいのと同時に不安もあります。
住宅への注文が、家族全員足並みが揃えばスムーズなのですが、希望は違うことの方が多く口論に繋がることもありがちです。
すると、どうしても押しの強い人間の意見が通ってしまい(我が家では主人と、わたしの母)、出来上がってから後悔することになりかねません。
口論を避け我慢するのではなく、納得するまで話し合うことをお勧めします。
特に、我が家のような狭い家では、設計の段階にて、どこにどんな家具を収めるかを決めてしまうので、後で融通が利きません。
こうすれば良かったと感じやすい点でもあるので、気を付けてください。
また予算は家の本体とそれ以外にかかる予算が必要です。
一生に一度の買い物だからとつい欲張ってしまいがちですが、老後資金や子供の教育費など、必要なお金は残しておくのが賢明です。
ローンでなく現金払いを選択したことは、残りのお金が見えて良かったと思っています。
最後になりますが、プランが決まるまでは体力と気力が相当要ります。頑張ってください!