東京都在住の40代自営業(E)様より、注文住宅で荷物の収納場所に配慮し検討した、「地下室・ロフト・3階建て」の家造りの体験談を紹介致します。
私の家はいわゆる狭小住宅なのですが、平均家庭より多い荷物の収納に苦しんできました。快適さを維持したまま家に収納するには、限られた土地を最大限に活用する必要があります。そこで建て替えの際に検討したのが、地下室を作るか、3階建てにするかでした。
結果として、そのどちらでもなくロフトに落ち着いたのですが、なぜそうなったのか、それぞれのメリット・デメリットを比較しながらご紹介します。
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目次
地下室のメリット・デメリットとは?
ずっと建て替えるなら地下室を作りたいと希望していました。その理由は、子供が「ドラム」を練習するための楽器室が欲しかったからです。説明するまでもなく、ドラムの発する音量は他の楽器の比ではありません。
防音対策の上で「地下室」が一番効果的だとプロの演奏家さんから聞いていたので、地下室を得意としているハウスメーカーへ無料相談に行き、見積もりを出してもらいました。
メリット
・防音に優れているので、楽器室としてだけでなく、ホームシアターを設ける方も多い地下室。偶然担当して頂いた営業さんが、同じドラム教室に通っていたご夫婦に地下室付きのお家を建てていたことがわかり「バンド練習もできますよ」と、アドバイス頂きました。
・地震に強いです。揺れるのは地上の部分なので、地下室は家の中の避難所として最適です。関東に住んでいる身としては「地下室があったらまさかの時に助かる!」という魅力を感じます。
・地下室は一定の条件をクリアすれば容積率から除外できます。
容積率(建物全体の床面積÷敷地面積)とは、土地に対して建てられる建物の大きさを定める建築基準の一つで、都市計画によって異なります。
地下室の広さが「建物全体の床面積」の1/3以下であれば、床面積から除外できるので、容積率の心配をせずに作ることができます。我が家のような狭小住宅だと、1フロア分多く建てられるのは部屋の間取りに大きなメリットです。
・一年を通じ気温差が少ないです。
ドラム教室のご夫婦によると、夏はまあまあ涼しく冬はそこそこ暖かいのが一番気に入っているのだとか。現地見学会で拝見したお宅では、その観点からトレーニングジムにされていていました。
デメリット
・結露対策が大変で、この結露対策が業者選択の要になります。
営業の方によると、地下室を専門にしているところはカビやダニの発生を防ぐための湿気対策がしっかりしているのですが、あまり得意でないところではカビの温床になってしまうこともあるそうです。
他の(地下室を売りにしていない)ハウスメーカーさんに地下室の相談をした際、1社は「できる」、2社は「できるけど湿気の問題があるからオススメしない」という回答をいただきました。
・まれに地面を掘っていくとどうしても水が溜まってしまう(湧き出てくる)土地があり、そういう場所には地下室を設置することができません。
そんなことにならないように私が相談したハウスメーカーでは事前調査が必須で、山のふもと周辺は雨が土壌にしみ込んで低い方に流れていくので(我が家のケースに該当)慎重に審査すると伺いました。
・建築コストは高いです。
見積もりを出してもらったとき、思わず金額を二度見してしまいました!
地下室を作るために掘り出した土砂を捨てる費用が掛かるので(しかも高い)、別のハウスメーカーに「2階建て」で出してもらったものより、見積もりは2倍近くしていました。
むしろ、地上3階建ての方が4~500万円安かったです。
以上に加えて、定期的にメンテナンスが必要だと聞き、予算の大オーバーで断念することにしました。
3Fのメリット・デメリット
選択肢から退場となった地下室の代わりに注目したのが3階建て。
以前の家が建てられたときより厳しくなった建築基準のために、狭かった家がさらに小さくなると判明したので、地下がだめなら上に大きくしたかったのです。
幸いなことに、我が家は3階建てが許可されている区画なので(3階建てが建てられない所もありますから、必ず確認してください)相談してみました。
メリット
・狭い2階建てでは小さなサイズの部屋しかできませんが、3階建てだと余裕を持って間取りを決めることができ、プランがひろがります。
・風通しや採光が良いのは、3階ならではの醍醐味です。
窓から外も広く見渡せますし、2階建てでは小さなベランダしかつけられなくても、3階建てだとバルコニーを作ることができ、洗濯物を干すのも楽です。
しかし、それはデメリットにもなりえる点なのです(デメリット参照)。
デメリット
・動線が上下に伸びる、つまり階段の移動が大変になります。
解決案として2階をリビングにし家の基点とすることを提案されましたが、水回りを全て2階に持ってくることへの不安が残りました。
というのは、2階をリビングにしている友人から、帰宅しても重い荷物を持って必ず2階に上がるのは想像していたよりダメージがあるということと、水回りの故障があったとき修繕費がかかり大変だったという話を聞いていたからです。
宅急便などで、都度1階に降りていくのが地味に面倒だというアドバイスも頷けます。かといって1階をリビングにすると、3階への昇降(特に洗濯物を持って)は大変です。
いずれにせよ3階建ては老齢に入ったときのことを考えると、厳しいものがあると気づきました。
・ご近所づきあいは良好だと思っていた私ですが、実は隣家の奥さんから「3階建てが建つとこっちが日陰にならないか心配だねって家で話しているのよ」と言われました。
隣は2階建てなので心配されるのもわかります。「建築基準があるから大丈夫ですよ」と返事したのですが、思い出したのは近年できた住宅地を購入されたあるお母さんのお話。そのお宅を購入した3年後に、向かい側に3階建ての老人ホームができました。
当然日照権に配慮して建築基準より厳しくして建設するという説明があったそうですが、実際出来上がると、彼女のお宅だけが14時くらいで日陰になってしまうのです。
困り果てたので「老人ホームにクレームを入れている」と子供会で聞きました。建築基準をクリアしていれば大丈夫とはいかなかった事例で、隣近所から理解をしてもらえるような配慮が必要ですね。
・地下室ほどではありませんが、建築コストは高くなります。
私の場合では、地下室は2階建ての約2倍、3階建ては1.5~1.6倍の見積もりでした。
・3階建ては構造計算書の提出や、防火基準が厳しくなるそうですが、我が家は2階建てでも構造計算書は必須(ハウスメーカーの方針)で、防火基準の厳しい地区(準工業地域)に入っていたので、これは関係ありませんでした。
しかし防火基準が厳しいのはコスト高に直結します。
窓や雨戸やら全てが高くなり、自分の地区が恨めしく思えました。
以上の点から3階建ても諦めようかというときに頂いた提案は「ロフトをつけたらいかがですか」というものでした。
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ロフトのメリット・デメリット
メリット
・1.4m以下の高さなら階数にカウントされないので、3階を建てられない場合にもプラスアルファの場所を作れます。
ロフトの直下階の半分以下なら床面積に入れなくて済むので、固定資産税も安くなります。
ちなみに、それ以上の大きさのロフトが欲しいなら、3階建てを工務店の方から勧められました。
デメリットに挙げた理由から、ロフトを広くしてもあまり使い勝手が良いわけではないからです。
・物置としてだけでなく寝室、書斎など機能をもたせた使い方で狭小住宅をカバーします。
現地見学会で見たロフトは、子供たちの寝室でエアコンも完備し気温対策がしてありました。我が家では3か所ロフトがありますが、主人と子供は趣味部屋に(本やCDコーナー)、広いロフトは物置として利用しています。
物置用のロフトは一番低いところは高さ60cmしかありませんが、3段ボックスを横置きにして無駄なく使っています。
デメリット
・高さが低いので立っての作業には向いていません。
うっかり天井に頭をぶつけるよりも、腰への負担がきついです。ロフトは140cm以下の制限があるので、屋根の形状次第ではそれだけの高さが確保できないスペースもあります。
・普通の部屋に比べ、夏はさらに暑く、冬はとても寒いです。
しかもロフト付きの部屋はエアコンが効くのにかなり時間がかかり不便です。
・可動式ハシゴは想像より急で、昇降に注意が必要です。
ハシゴを引っ掛けるタイプは男性にとってもかなり重く、非力な女性だと一人で移動させるのは非常に大変でしょう。
我が家も、主人が高齢になったら掛けっ放しになるだろうと思っています。
ロフトにして良かった?悪かった?
とにかく収納スペースを確保したかった我が家は、予算の都合でロフトを作りました。子供用のロフトと物置用のロフトは共通の固定階段をつけたのですが、これは大正解と満足しています。
重い荷物は固定階段でないとロフトに上げられません。その分コストがかさみますが、3階建てよりはずっと安くてすみます。ただ部屋と違って長居できるスペースでないことを忘れずに。
趣味部屋にしたはずの旦那と子供ですが、今では趣味の物置としてしか利用していません。暑すぎたり寒すぎたり圧迫感があったりで、リラックスできないからだそうです。
正直なところ、我が家にもう少し予算があれば3階建ての方が良かったかなと思うことはあります。でも将来子供が巣立って(ずっと家にいる可能性もありますが)夫婦二人になることを考えると、やはりロフトで良かったのだと思います。
皆さんも家を建てられる際は、どのような利用をしたいのかに加え、将来のことも念頭においてプランを立ててくださいね。