「念願のマイホーム」という言葉を聞くと、戸建住宅をイメージしてしまう人の方が多いのではないでしょうか?
都市部に住んでいると、マンションは珍しくありません。しかし、地方に行くと戸建か小規模賃貸アパートしかないという町が一般的です。つまり、人口は都市部に集中していますが、日本全体からみれば「マイホームと言えば、戸建」、「戸建という選択肢しかない」という地域が広範囲を占めているわけです。
首都圏など大都市に暮らしでも、「庭付き一戸建」で家族とのびのび幸せに暮らしたい、そんな夢を思い描く方は多いです。しかし、現実は通勤などの利便性や価格面からマンションを選ぶ人は大勢います。戸建て処分で悩み抜いた経験を元、「マンションと戸建どちらが良いのか?」をお伝えします。
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目次
マイホーム購入のタイミングは慎重に!
それは、購入時の選択に因るものですから、その時点で決めたものが正解と言えます。
その時点では、通勤や子育てといった日々の生活を最優先して探し求め、巡り合った物件に恋をするように惹かれて契約に至ったのならば、それがマンションであっても戸建であっても、その時点での正しい決断には違いありません。
不動産業者であるならば「今が買い時というものですよ!」とお薦めするでしょう。
ただし、いくらかでも目的物件に迷いがあったり、マンションか戸建のどちらが正解なのか決められないといった場合は、今現在の生活圏だけでなく、圏外にも範囲を広げて物件情報を眺めるだけでもしておくことをお薦めいたします。
最後まで迷いながらマイホーム購入を決定すれば、後々「あー、やっぱり失敗したかなぁ、、、」と言うことにもなります。良い事はありませんので、迷いを解決した後に決定しなければなりません。
30代と50代ではマイホームに対する考え方が違っている
マイホームに対する考え方の変化についてお話ししたいと思います。
私は30歳まで大阪市のマンション、50歳まで東京近郊のマンションで暮らしていました。都心への通勤の為に購入したのはマンションです。一戸建を希望してはいたのですが、予算的に厳しいと感じ、マンション購入となりました。
両親は岡山市内、岡山駅から15kmほど離れた広めの庭付き一軒家に住んでおり、亡くなった親戚の空き家も管理所有していました。私の両親やその姉妹(生きているなら今80歳後半)、親戚はマンション暮らしを経験したことがありません。
ですので、私たち夫婦がマンションを購入することに対して完璧に理解することはできなかったようです。戸建生活者には、マンション=窮屈、という考えが根強くあり、その長所を知らなかったからです。
ところが、父が急死。母は5年間病院で寝たきりで亡くなり、叔母たちはただ今老人施設入居中です。マンション暮らしではないにしても「集合住宅」で生活するような状態ですね。
両親、叔母や他の親戚の家はすべて庭や畑付きの戸建です。70歳を過ぎるころから、管理が難しくなり、徐々に荒れ果てて行きました。今では管理や修繕に費用ばかりかかります。周辺にも、放置された空き家があちこちにあります。
築30年以上であるものは、今の若い世代から見向きもされなくなります。子や孫がいてもそれぞれに「念願のマイホーム」を求めて、古い家には帰って来なくなります。少子高齢化が進み、既存物件が余ってきています。
物件探しをしている人にとってはありがたいことではありますが、「売る側にとっては困った状況」なのです。私が直面している問題も、そこにあります。空き家を処分したい、つまり「売りたくても売れないという悩み」です。
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今購入検討している物件は終の棲家となりうるものですか?
仮に、30歳頃に30年ローンを組んでマイホームを購入したとしましょう。60代で完済できるのだから、老後はなんとか生活が確保できると誰しも考えたいものです。
でも、30年という年月の間には予想していなかったことも起こりうるものです。家は子や孫が受け継いでくれる、なんてこともこれからますます期待できなくなっていきます。
戸建は、老朽化してくると維持管理が大変で、想像以上の大出費となりかねません。マンションの場合も修繕積立金がありますが、一住人だけが悩まなければならないということはそうそうないことです。戸建ですと、その住人が全ての悩みを背負うことになります。その住人が亡くなってしまった場合、引き継いだ者が悩むことになります。
「終の棲家」という言葉は素晴らしく素敵に聞こえます。しかし、実際は本当に理想的な老後を送ることができるのか、徐々に不安が増大して行きます。
50代半ばの独身女性が購入した戸建に衝撃を受ける
先日、友人が戸建を買ったという話を聞いて衝撃を受けました。
彼女には子供はおらず、離婚後、パートで働きながら猫と一緒に借家生活をしていました。ところが借家の取壊しが決まり、期限までに退去せざるをえなくなったのです。
実家は兄夫婦が継いでいる為、出戻ることはできません。そこで、貯金額の400万円で家探しをしたというのです。
職場のある岡山市中心部に通勤できるところであれば、岡山県内のどこでも良いという条件です。その後、職場から20kmの南東、瀬戸内海に近い農村部にある平屋を見つけたのです。車3台分ほど止められる庭が付いた、築18年、2LDK、約80㎡の平屋。
田舎ではありますが、田んぼや山奥の一軒家ではなく、周囲には民家が数十件並んでいます。車で5分も走ればスーパーからホームセンター、病院、運動公園、全て揃った便利な場所。
自己資金が少ない友人にとって、400万円で購入できるその家は大変な魅力でした。しかし、全財産全てを使うわけにはいかず、銀行で相談した結果、自己資金200万円、借入200万円で購入できたそうです。
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その友人の400万円の戸建に衝撃を受けた別の理由
友人が猫とのびのび幸せそうに暮らしている姿を見て、「信じられない、最高の買い物だったね!」と心から喜んだのは本当です。
その一方で、私が置かれている「空き家が売れない」状況が厳しいということに気づかされ、いっそう気分が落ち込んでいきました。
悩みのタネの空き家をどうにか処分できないものかと不動産業者に相談したところ、想像以上に厳しい言葉を聞かされていたからです。たとえ岡山市内にある物件であっても、「その家でなければならない」という購入希望者が現れない限り、評価額を出しても意味がありません。
土地付き一戸建は動きが少ない。家を取り壊して土地だけにするのであれば買い手を見つけやすい。取り壊せないのなら買い手が現れるまで延々と待つしかない。売り急ぐのなら、土地代金程度の売却金額に設定しなければ売れないだろう。というお話です。
「確かに、そうでしょうね」と首をうなだれるしかありませんでした。中心部からほんのちょっと離れるだけで、空き家はたくさんあるのですから。購入する側からすれば選び放題、値切り放題となります。友人の400万円の家というのも、納得です。元の所有者が不要になった家を処分するために土地代金程度で手放した一例だったわけです。
空き家情報を眺めてみるのも勉強になる
友人との話の後、そのような空き家情報をチェックしてみることにしました。自治体の公式ホームページには、空き家情報が載っているのをご存知でしょうか?
「○○市(町) 空き家情報」で検索すれば良いのです。もちろん、他にもたくさん物件はありますから不動産業者に問い合わせてみるのも良いですね。
どこの県でも人口減少、中心部や都市への住民流出が問題となっています。その為、多くの自治体が移住者誘致の為にさまざまな取り組みをするようになってきました。お試し移住の為に住居を用意したりしています。古民家を改造して、旅館やレストランの経営を始める県外や海外からの移住者も珍しくなくなってきました。
ひとつの場所に住み続けることしか考えられなかった者には想像することも、遭遇することもできなかった新しい世界がそこに繰り広げられています。それを知ることは嬉しい驚きでもあります。
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マイホームは一生に一度の買い物と思いこまない方が良い
では、マンションと戸建のどっちが良いのか?その結論に辿りつく前に、考えておくべきテーマがあると考えています。
「終の棲家」を求めてマイホーム購入するという人は、もしかしたらそこが人生の最終地ではないかもしれないということについて、もっと考えてみる必要があるのではないでしょうか?
住宅ローンは20年であれ30年であれ、その長い期間に取り巻く状況が一変することも十分に考えられます。その時に資金が無いというのでは、念願のマイホームも悲しい結末を迎えかねません。若くて元気なときは広い庭付き一戸建に魅力を感じます。
しかし、30年後の自分が楽しんで庭仕事をしたり、階段を上り下りしているとは限らないのです。子や親戚や、誰かの手助けを必要とするようになり、フラットなスペースのみでの生活となり、いつしかマイホームから出て、老人施設や病院という「集合住宅」へ移住するという将来を少しは見つめていかなければなりません。
身動きが取りやすいとライフステージ毎に柔軟に対応可能
ライフステージ毎の柔軟性を考えるならば、マンションでの暮らしの方が身動き取りやすいと言えます。身動きとは、車イスでの生活がしやすいというような意味だけで言っているのではありません。
マンションはそれなりに人気の有る場所に建っており、住人の入れ替わりが見込めるから処分もしやすく、その価格も取引事例からかけ離れるということはありません。
退職するまでは、勤務先への通勤に便利な場所に住み、たとえ日当たりが悪く騒がしいマンション生活をしたとしても、その次のライフステージにおいて、風光明美な広々とした土地での暮らしも十分可能なのです。
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マンションか戸建かという問題より、ライフステージに合った住環境を考えよう!
首都圏など物件が高額なエリアでは、地価が高いということのみでなく、人気・流動性があるからこそ高額を維持していると言えます。地方部に比べれば、売却もしやすいということですが、この先ローン完済時に状況がどう変化しているかはまったくわかりません。
マンションにしろ戸建にしろ、資産を上手に保全し資金も残しておくことができれば、不測の事態に備えることができますし、次のライフステージへ進む希望も持てます。
肝心なことは、老後を思い描けない若い時代に、「終の棲家」への投資だと意気込んで気力も財力も全てつぎ込むようなマイホームの購入はするべきではないということです。私たち夫婦も若いころは一軒家に憧れていました。
しかし、60代に突入しようかというお年頃になってくると状況が変わりました。節約・省エネ・身軽さ、すなわち負担の軽減を願うようになってきますと、戸建の存在は重くのしかかるばかりです。
管理している広い庭付き戸建を売却するには何年待たなければならないのか。それまで改修、家財道具の処分、庭木の手入れをどうしたら良いのか、途方に暮れます。
貸せばよいではないか?と思われるでしょうが、貸せるようにするまでが大変です。この先大家を努める気力もありません。「身軽な老後を過ごしたい」のです。
最後に結論を出すとするならば
まさかこんな場所に移住するとは思わなかった!というような遠く離れた場所で第2、第3の人生をスタートさせる人はこれからもっと増えることでしょう。
たとえば、そういう人たちの足跡をちょっとでも見聞きしておくことで、現在のライフステージでのマイホーム購入検討を違った角度から見直したり、先見の明を持って判断を下すことができるかもしれませんよ。
具体的に言うならば、「無理して3000万の30年ローンを組むより、子育て終了後、あるいは退職後のライフステージを最高のものにすることを第一目標と設定し、2000万のローンで購入可能なマンションを選択しよう。仮に希望地へ移住できないとしても、足腰が弱った頃にはエレベーターがあるマンションの方が安心だ!」といったような柔軟な思考をしましょうということです。その思考の為の導きとなる情報をより多く取り込むことが大切なのですね。
今の生活状況しか見えていない若い時代、あるいは体力が衰え始めた確固たる後継ぎのいない熟年時代に、マイホーム、「特に戸建を購入するのは、マンションを購入するよりもリスクが高い」ということです。それがたどり着いた結論であり、訴えたいポイントです。
もちろん、資金面で余裕のある方は別のご意見をお持ちのことと思います。これはあくまでも資金力が乏しいのにも関わらず、ある日突然、数件の老朽化が進む空き家管理をせざるをえなくなった私の結論です。これらがマンションであったならこれほどまでに重荷に感じなくて済んだのに、というのが本音です。